1月10日、神奈川朝鮮中高級学校高級部3年男子生徒(18)の玉川大農学部(東京都町田市)一般入試出願に関して、同校教員が大学に問い合わせたところ、同大学は「朝鮮学校の生徒には受験資格がない」、「『高等学校卒業程度認定試験』(旧『大検』)の合格が必要」と受験を拒否した。
これと関連し、18日午前、人権協会の弁護士たちが学校教員と共に、玉川大学に対して、受験拒否の姿勢を改めるよう要請を行った。
提出した要請書は下記のとおりである。
玉川大学学長 小原 芳明 殿
現在、日本国内には約70カ所に幼稚園から大学までの朝鮮学校があり、約1万人に及ぶ
生徒たちが通っています。
1945年8月15日以降、日本各地につくられた朝鮮学校では草創期より日本の学制に
合わせた6・3・3・4制をとり、現在に至るまで母国語を中心に民族の歴史、文化を教え、
日本社会にも適応できる総合的な学力を備えた人材を育成するためのカリキュラムによる教
育を行ってきました。また最近では朝鮮学校と日本学校の交流も盛んになり、毎年各地で開
かれる朝鮮学校の公開授業には多くの日本の市民の方々が足を運んでいます。このような中、
朝鮮学校に対してもその実態に照らし、日本学校と同等の処遇を為すべきという考え方が広
がりを見せ、この10数年間だけをとってみてもJR定期券の割引率差別の撤廃や高体連主催
のスポーツ大会への参加認定、大学院、大学における入学(受験)資格が弾力化され国立大学
及び大学院への受験の道が開かれるなどその処遇は大きく改善されるところとなりました。
各大学においても一昨年の文科省の弾力化措置以前から朝鮮学校高級部(朝高)卒業生の
入学資格を認めてきた早稲田、慶應、明治、中央や関西学院、関西、同志社、立命館など多く
の私立大学および首都大学東京や横浜市立、大阪府立、京都府立医科など多くの公立大学に加
え、昨年度入試からはほぼすべての国立大学が朝鮮学校卒業生にも受験資格を認めることとな
り、もはや日本社会においても朝高卒業生らの入学資格を認めることはその大勢となっている
といえます。
そのような中、貴大学が神奈川朝鮮中高級学校高級部卒業生の入学(受験)資格を認めない、
その為の個別審査すら拒否しようとすると聞き、まさに耳を疑う思いと言わざるを得ません。
国際化が叫ばれて久しく、また実際に多くの外国人が生活を営む今日の日本社会において、
民族的マイノリティに対し「・・・・文化的、およびその他の分野において、その集団と個人の十
分な発展、保護を確保する特別かつ具体的な措置をとる」(人種差別撤廃条約第2条2項)、
「自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定
されない」(国際人権規約・自由権規約第27条および子どもの権利条約第30条)などと定
める国際人権諸条約に基づき、外国人がそのアイデンティティをはぐくむこと、ひいてはそれ
を育む教育施設を尊重し、これを正当に扱うことは、今や国際人権法の観点からも当然のこと
として求められています。このことは、日本が批准しているこれら国際人権諸条約の各国にお
ける実施状況を監視する委員会が、この間、日本政府に対し、「朝鮮出身の児童の高等教育施
設への不平等なアクセス」の是正(子どもの権利(条約)委員会1998年6月5日総括所見)や
「在日コリアンの生徒が高等教育へのアクセスにおいて不平等な取扱いを受けていることを懸
念している。締約国が、この点における朝鮮人をはじめとするマイノリティの差別的な取扱い
を撤廃するための適切な手段を講じ」ること(人種差別撤廃(条約)委員会2001.3.20)を、再
三にわたり勧告していることからも明らかです。
先に述べた、大学受験において、試験を受けるためのスタートラインにさえ立たせて貰えない
という不条理な状況が改善され、遅まきながらも大半の大学において朝高卒業生の入学(受験)
資格が認められるに至ったのは、このような国際的な潮流に則るものです。それにもかかわらず、
貴大学が、国際的な潮流・国際人権諸条約に真っ向から反し、旧態依然の姿勢をとり続け、朝高
卒業生の高等教育へのアクセス権を不当に侵害し続けることを本協会としては到底看過すること
ができません。
貴大学の大学出願資格に関する規定では、高等学校卒業程度認定試験合格者等とともに「その他、
相当の年齢に達し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると本学が認めた者」と規定され
ており、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力」の有無について個別審査することが可能なも
のとなっています。これに基づき学力認定をすべきことは、多くの大学がそうしていることから
もさして困難なことでないことは明らかです。
日本に暮らす朝鮮人をはじめとする外国人が、自己の言語や文化を学ぶため民族教育を受けると
いう極めて当たり前のことにさえ社会的・制度的なハンディがつきまとう状態を一刻も早く解消す
るという観点に立ち、速やかにその受験の門戸を開く決断をされることを強く求めるとともに、万
が一、来年度入試に間に合う形での早期解決がなされない場合、法的手段を含むあらゆる措置を講
じて貴大学の翻意を強く促す決意であることを敢えて付記してお
きます。
2007年1月18日
在日本朝鮮人人権協会